朝のコインランドリー

洗うものは山ほどあるんだけど

one dress in the closet

今週のお題「お気に入りの一着」


クローゼットの中にあるお気に入りの一着は何ですか?

この質問には答えざるを得ないだろう。細かいことを言うとほとんどの服は箪笥に収納している。そのため、クローゼットの中にあるのは大学に着ていくブラウス、皺をつけたくないスカート、コート類に限られる。

あとは、一枚ワンピースがハンガーに吊るされている。深い緑の無地ワンピースは、夏に海外で買ったものだ。胸元にシルバーのアクセントが付いている。ゆるっとしたシルエットを気に入って買ったけれど、黒い皮のベルトを巻いてもかわいい。同じ場所で買った黒のストールを裏地の赤い黒革ショルダーバッグの中に入れて、おそろしくかかとの高い黒革のサンダルを履いて。お母さんにお下がりでもらった金色のイヤリングを付けたらぐっと大人っぽくなれると思う。おばあちゃんに昔もらったアメジストの指輪をはめてもいいなぁ。マニキュアの色は赤がいい。

こんな素敵な服を持っているので、早く夏になってほしいです。








「暗闇の中で待ち焦がれている」






目を覚ました。薄暗い。

ここは作りつけの戸棚の中だ。私はずっとここで眠っている。冬が終わるまで。

太陽の照る季節になったらまた出かけることができる。今はただ、眠るだけ。


夢の中で思い出すのは日に焼けた肌と白い歯を見せて笑う顔。私の内側で心臓が脈打つ音。

慣れない靴の高さで歩幅は狭く、駅から緑溢れる大学のキャンパスまで500メートルの間に汗でじっとりしてしまう。

約束のレジュメ類は肩にかけた鞄の中だ。何度も開けて確認している。

会うのは優に二ヶ月ぶり、もしかしたらそれ以上かもしれない。ともかく、脈拍が正常ではないのは確かだった。


待ち合わせの正門前の木陰で立ち止まる。そろそろとサンダルの中に仕舞われている足を抜いて痺れからしばし解放されている様子だ。

足に塗ったペディキュアを眺めていると、「久しぶり」と声がかかった。


慌てて靴の中に足を戻すと、面白そうな顔で「元気だった?」と尋ねてくる。懐かしげに目を細められ、胸が高鳴るのがわかる。

「まあまあかな。相変わらず、日焼けしてるね。どう、部活」

緊張して早口になる。裾を見えないところで引っ張るのはやめてほしい。

こちらの方が神経質になっているのを知ってか知らずか、相手はふいと目を逸らした。

「ずっと合宿だよ。浦島太郎になりそう。旅行にも行けないしさ」

そういえば、というふうに「アメリカはどうだった?」と聞いてくる。



預かっていたプリントの束を手渡して、じゃあ と立ち去る間際、ためらいがちに呼び止められる。

「雰囲気変わったね。いいよ」

こぼれる笑みは自分では見えないけれど、初めてのお出かけにしては上出来すぎるくらい上出来。

次回は映画館デートの時にでも着てもらえたらいい。一年後の可能性もあるけれど。