朝のコインランドリー

洗うものは山ほどあるんだけど

チラシのうら



一度出会ったら人は人をうしなわない。

去年わたしを励まし続けた言葉を、その原因となった人に貸す約束をした。
約束。ずいぶんと軽い言葉になってしまったと思う。どの約束も、保証人のいる契約関係とは遠く、脆い。押したら崩れてしまいそうだ。
言葉で確認することは、たぶんまちがっていて、言葉で確認せず済むほどには明らかではない。きっと約束とは、挨拶程度に過ぎない。

目を瞑ればいつでも取り出して楽しむことができるんだと言う人もあったけど、その人も去ってしまった。思い出なんて苦い言葉は嫌い。今が好きで自分の立ち入れない場所は苦手だ。自分の立ち入れない場所、友達と知らない人 とか もう誰もいない教室 とか。

怖いものは怖い。最初からずっと怖い。いつでも取り返しのつかない場所には行ってしまえる事が。

人生で一番長く家を離れた夏、トランクを引きずり我が家の敷居を跨いだとき自分の知らない匂いをかいだ。自分は他人にとって他人だ。

ものさしで測られることなんて全然、怖くない。すでにもう帰れないのだから。