朝のコインランドリー

洗うものは山ほどあるんだけど

夜空を駆ける犬



おじいちゃんに大きな犬のぬいぐるみをかってもらった。ちゃいろとしろのミックスで、サーティワンキャラメルリボンみたいな色をしている。わたしのいえでは犬をかっていない。ママがアレルギーをもっているからだ。だから、犬のしゅるいにはくわしくない。

たん生日にあかいリボンがついた大きいふくろをもらったので、すごくどきどきした。いままででこんなに大きいプレゼントをもらったことはなかったから、わくわくした。
あけるとき、いもうとがママのよこから、じーっと見ていたので、赤いリボンをあけられないまえに、いそいであけた。リボンは、あとであげた。

ねる時はいつもいっしょにねる。じぶんがふとんにはいる前にもうふをかぶせておくと、わたしのことをまってくれている気がするので、早くじゅんびしてふとんにはいる。
ぎゅーっとするとふわふわできもちいい。





目覚ましはかけてないけどちゃんと午前中に起きられた。最近洋画に凝っていて、寝るのがすっかり遅くなる。当然、起きる時間も遅くなる。お昼の時間を過ぎることなんか、ざらだ。

昨晩はお酒を飲まなかったからだろうか。夢を見た気がする。前まではレム睡眠が長かったのか、一晩に三つくらい夢をはしごするのが常だったけれど最近めっきり見なくなった。

満天の星空。風のない冬の夜を、私は大きな犬の背に乗って飛んでいた。音のない世界。
滑らかな毛並みに両手をはさみこみ、ひざをきゅっと締めてしがみついた背中から、窓もテレビ画面も通さないネオンの海を見下ろしていた。眺めているうちに色が変わる海。赤、黄、青、緑、紫、橙… 宝石が夜のさざ波に揉まれるように揺れる。冷えた鼻先を犬の耳の裏に当てると哺乳瓶のようなぬくみが伝わった。

高校校舎の屋上に行きたい。そう呼び掛けようと思って、呼ぶべき名前がその犬にはないことに気付く。その瞬間、ふーっと犬の姿が、輪郭ごと消え私は宙に投げ出される。落下するかと思ったけれど、すでにそこはネオンの光る都会の空ではなく、カシオペア座が煌煌と照らす宇宙空間の外気圏だった。フワフワ浮かびながら、私は途方に暮れる。何だか根無し草になったみたいだ。落ち着かない。そう思った一秒後にはベッドの上で目覚めていた。