新宿プローズ
まぶたを閉じた思い出横丁
人のいない小田急前、ルイヴィトンの広告にキスするスペイン人
新宿御苑落ち葉のシャワー
心の落ち葉がかさかさと音を立てる
積もった言葉が踏みしめられ
ぱきりぱきりと鳴いている
夜の砂漠みたいな人だった
水を渇望しているのに自らの性質から逃れることができない
静かで穏やかで 多分少し淋しそうだった
その孤独を見つけた時から一滴ずつ真水を貯めた
ある日 わたしはコップに満ち満ちた一杯の真水を差し出した
それは幾星霜沈黙を守る あまたの砂の海に染みて消えた
まるで最初から何もなかったみたいに消えた