朝のコインランドリー

洗うものは山ほどあるんだけど

ダイアモンド



いつも通りのランドリーからの帰り道、今日はとても寒かったので黒のニット帽を被った。ニット帽を被っているとイヤホンが固定されるからウォークマンの音楽もクリアに聴こえる。

本日はキリッと晴れていて秋の終末の青空という趣き。そして夜の空気もまたキリリと澄んでいた。月が綺麗だ。
実はランドリーで乾燥機にかけた衣服を取りに行く前、電灯の少なくて人気も夜は減るベンチに寝そべって夜空を見上げていたわけだけど、田舎は素晴らしいね。この大学は信じられないくらい澄んだ空気の中に存在している。

ウォークマンで聴くアーティストはほとんど決まっている。今日もブックマーク3を開きランダムに再生される物語を聞き流しながら乾燥機から乾燥された、またはやや湿っているタオルやセーターを畳んで大きめの黒い鞄に仕舞う。
いつもなら誰かと競うかのように急いて衣服を鞄に押し込みコインランドリーを立ち去るけど、寒空の下で十分にかじかんだ指先に乾燥機仕立てのタオルは心地よかった。

ランドリーを出た瞬間、ちょうど音楽が切り替わる。手を動かす作業中よりも足を運ぶ間の方が聴覚に意識が行く。流れ出したのは中学三年生の時に毎朝聴いていた曲だった。
最近は音楽を聴いただけで胸が熱くなったり涙を流したりする事はない。けど、繊細で獰猛な時期は尖った言葉や包み込むような旋律の曲を一人で聴いて泣く事があった。
マンションの屋上で聴く曲はいつも同じアーティストのものだったし、毎朝通学電車の内側から朝陽を浴びて眼を瞑りながら耳を傾けたのも彼らの曲だった。

あんなに大切にしていたから、今でも時々同じ気持ちで聴く事ができるんだろうか。
あの日の私と今日の私は確実に隔絶していて、距離はもう測れないくらい遠くて、でも同じ白い線の上に居るのかもしれない。
キラキラなのはどっちか決めなくていい。けど、磨かないといけない。磨こう。