朝のコインランドリー

洗うものは山ほどあるんだけど

時を刻む

 

学生時代に通っていたコーヒーショップが閉店すると聞いて最終日に覗きに行った。多くの人に愛された店の最期は、人の列が絶えない盛況ぶりだった。

こんなにも寵愛されているならば、廃業することもないのだろうけれど、個人店というのはそれなりの理由がそれなりの時間を経て閉店という結末に至る。

私が大学生だった5年間はもはや同じだけの月日を遡るほど遠い。今もこれからも過去は過去だ。並ぶであろうと事前に推測できたため、大学の近所に住む当時の恋人に声をかけて連れだったが、思ったより話は弾まず僅かに悔いた。

お互いの仕事の話と現在彼が付き合っている年上の女性との生活の話をして、母校のキャンパスをうろつき、めいめいにジュンク堂で気になる本を物色し駅前で別れた。

キャンパスはもう居場所とは呼べず、慣れ親しんだ街の風景も相貌を変え、元彼の香水はつんと鼻についた。新卒の頃に別れて以来も細々と会い続けた彼とも、これを限りに顔を見ることはなかろうと感じた。

適切に更新されてゆく歳月は、万人の前に静かに横たわる。口にせずとも分かってしまう老いになすすべはない。

立ち読みしたヘミングウェイの批評文は横滑りして頭に入って来なかったけれど、ばかばかしくて読まなくてもいいくらい普遍的価値観のように思えた。

未だ成熟しない心が、個体群のなかで窮屈に思えて仕方がなかった。

書き癖について

 

ヘアサロンで髪を染めている。

染め粉で頭皮がピリピリするので、感覚を分散させるためになんとなく書いている。

まとまった文章を定期的に書かないのは良くない。伸ばしっぱなしの髪や爪のように、見てくれが悪くなる。

書く時に書いているという感覚を意識するのは慣れていない証左だ。リハビリだけして満足し、また書こうと思った時には、もう綺麗さっぱり感覚が失われているのだろう。

施術が終わったので、ここまでとする。

誤りについての考察

 

入社から2ヶ月が経った。

実は既に、二度仮病を使って会社を休んでいる。一度目は咽頭炎、二度目は婦人科系の病気というふうに。

 

まったくの嘘ではない。会社の飲み会のあとに扁桃炎をこじらせて高熱を出したし、生理前のPMSで気分の落ち込みと倦怠感があった。

ただ、繰り返すのは良くないと思う。癖がつくから。あの子は病弱という印象を与えるから。

 

私はお酒を飲むのが好きだ。アルコール由来の不調も少なくはない。それを人に見咎められる心配は強い。

 

もはや、大酒飲みではないなと思う。身体は老いていく。今月私は28歳になる。

 

人は、徐々に同じくらいのペースで老けるわけではないとTwitterで見た。そうかもしれない。

31歳はそのはじめに当たる節目らしい。

 

あと3年。

生活は去年とは変わった。勤め先も住処も、交友関係も。月給は上がり、家族との関係は軟化した。

 

後悔はしない。ただ、過去の自分の誤りを時たま振り返り内省したときに恥ずかしさを感じる。若さを理由にして言い訳できる年齢では、おそらくない。

 

生身の人間なので、これからも誤ることはあるだろう。道を踏み外すこともあるかもしれない。覚悟しながら、年を重ねていく。

 

正しさについての考察

 

 

入社から1ヶ月が経った。

転職とは、進学というよりも転校に近いと思う。留学の初期の頃の感覚もある。

勤め先が変わったとて、ライフステージが進んだわけではないからだと思う。切り替わった場面の登場人物や背景画や役柄は異なるものの、労働における動作そのものに変わりはないのだ。

 

所感

人生において人が正しいという道を外れることは、雨の降る夜に誰も通らない横断歩道の、信号ではなくあらゆる方角を目で見て確認しなければならないことに似ている。

 

初日は蜜月

 

転職した。

20代らしく、他業種のベンチャー企業に。

基本給が上がることと、後々のキャリアのためというのが主たる目的である。

 

前の職場が恋しくなることもあるだろうから、1日目のことを書き留めておく。

 

休暇の最終日目前に扁桃炎をこじらせたので、あやうく初出社が延期になるところだったもののなんとか熱は下がった。

喉からおじさんが出てくるのではないかと心配になるほど咳き込んでいたが、特段不調でもなくほっとした。

寝不足でもそうでなくとも、午後はうっかりすると眠りそうになる。緊張感だけで人は目を覚ますことができるのだろうか。私だけが気絶しそうなほど眠いのだろうか。

 

ところで、sleepyという単語は稚拙らしい。赤子や幼児しか使わないと聞いて、日本人がなんとはなしに用いそうな言葉であってもそういうことはあるのだと思った。

 

隣の席の同僚が台湾出身ということで、何か日本語に不自由していそうだったら力になってくれと言われた。喜んで承る。

 

主に語学力を買われ就職した身としては肩身が狭いが、私自身の英語スキルは現地人の義務教育レベル程度と思う。

ビジネスで使う機会がぐっと増えるわけだが、ずっとうっすらと不安を覚えている。

 

始まらないことに越したことはないが、周りもそこまでエキスパートではないようなので、初めは実務には追いつかずとも慣れていくものだろうか。

 

半年やってみて合わないようだったらその時に考えよう。街は好きだから気候がいい内に歩いてみよう。

 

ひとまず今夜は早めに寝ることとする。

 

大丈夫日記3

 

大丈夫な日は、朝起きてすぐにわかる。今日は凪の日だ。

 

夜中に救急車が往来を走り抜けるのを聞いて目を覚ましたので少し寝不足だ。寝る前に飲んだアルコールのせいかもしれない。

メンタルの調子が良くない時は飲まない方がいい。苦しくて悲しくて家の鍵も持たずに外を歩いていた。

 

朝食を摂れたことも大きい。お昼も美味しいものを食べたい。

大丈夫日記2

 

 

部屋を片付けた。

穏やかな風がカーテンをくぐり体を撫でる。ひさびさに小説を読んでいる。

今日は天気がいい。日も暮れたし、もう少ししたら銭湯に行こうと思う。

台湾の友達と深夜の喫茶店で落ち合う約束をしている。

セブンイレブンのチーズインハンバーグは安かったけどあまりおいしいと感じなかった。次はもう少し高いシリーズのものを選ぶと思う。