朝のコインランドリー

洗うものは山ほどあるんだけど

過発酵

 

 

クレームひとつ対応しただけで夜も眠れないなんて社会人やっていけるのだろうか。

 

今日オープンのベーカリーに販売スタッフとして出かけた。妹の友達の親が開いた店で、人手が足りないらしく親に頼まれてアルバイトとして働くことになった。といっても人件費とかの計算はまだできてないみたいので手伝いだと思って気楽にやってと言われた。その時嫌な予感はしていたのだ。

店の主がどんなにお遊びのつもりでも、客がお金を出して品を受け取るかぎり、商売は商売、それは商品だ。マネージメントがどれだけ素人であろうと、今後その土地で個人の小売店として生計を立ててやっていくつもりならば初日は踏ん張らないといけない。

何もあらかじめそこまで考えていたわけではなかったが、つまるところそういうところが甘かった。うちの親を除いていわゆる家業がサービス・飲食のスタッフはいない。現場は気のいいママさんたちが回しているけれど、気がいいだけではダメだ。こんなことをここで言っても仕方がないのだけど。

 

クレームをつけてきた人は全く悪くなくて100%店の落ち度だ。むしろ、“クレーム”に過剰反応してその人をトラブルとしか見なかった店の人たちにモヤモヤした。私が泣いたのはその人が怒りで泣きそうになりながら震える声で抑えようとしていたものが直に伝わってしまったからだ。私は望むと望まざるに関わらず共感力が人一倍強い。感情移入型だ。目の前の相手から流れ込む強い感情を自分ではコントロールできない。その女の人は赤ちゃんを抱っこひもで身体の前に抱いて自転車で戻ってきた。一個のミルクパンのために。店の電話は何度かけても繋がらなかったと言っていた。誰かの小さなバカらしいミスがこの人の大切な休日をどれだけ台無しにしてしまったのだろう。そんな風にかんがえる必要はないのに一度そう考えると、私個人のせいではなくとも申し訳なさと不甲斐なさで目頭が熱くなった。ぎゅっとこらえて、その人が帰る時までそばで突っ立っていたのだけど(その人は中に戻っていいですよと比較的柔らかい声で言ってくれたけど、並んでるお客さんからその人だけが好奇の視線に晒されてしまうのは嫌だったので)店の中に戻った時は多分半泣きで、しばらく誰とも目を合わせられなかった。10分しないうちに落ち着いてアイメイクと鼻の頭のファンデーションを直した。ママさん達の遠巻きの気遣いが地味に痛かった。普段は好きな食器洗いも、その時ばかりは水が流れるのと同じように涙がブワっと溢れるのでいちいち蛇口をとめて鼻をかんだり目元を拭ったりした。

長くなった。要領を得ない文章だ。クレームについてくわしく書くつもりはなかったけど、一度書き始めたら止まらなくなった。そもそもクレームってなんだっけ。後で消すかもしれない。

今までどのバイト先でも矢面に立つ事なくやってきたのでビックリしただけでむしろ就職する前に勉強になって良かったじゃん。そうだね。

親に後で話したら、あなたのそういう相手の気持ちに寄り添って考えられるところはお父さんに似ていると感心された。私は父親似で妹は母親似だ。でもこれは親の欲目みたいなものだと思う。私はただの一人の弱い人間だ。

明日はベーカリーのシフトはないけど昼から用事があるのであんまり夜更かしはしないで眠りたい。