朝のコインランドリー

洗うものは山ほどあるんだけど

2時間半かけて力尽きた

 

 

本当はやらなきゃいけないことがあるし明日の朝は早いのだけど、忘れる前に書こうと思ったので書く。前回分の続きかもしれない。

 

 

本の買い物に付き合ってくれた男友達は注文通り、ちゃんとデート仕様で来てくれた。初めて話しかけてからもうすぐ五年経つが、これほど良い歳の重ね方をしている同年代を私は他に知らない。いかに良いかを書いていたけど長すぎて気持ち悪くなったので割愛する。ただ、私が最も惹かれるのは彼のアナログな部分だと思う。

 

大体約束の時間には少し遅れてやってくるその友達は確かOB訪問のために買ったと言っていたネイビーのケーブルセーターに、白のシャツと黒のパンツを合わせて合流地点である芸術劇場前に現れた。好青年的なシンプルコーデも顔とスタイルが良いとこうも映えるのかと感心する反面少し嫉妬する自分もいた。整えてるとは思えない眉の形が完璧すぎる。足元はスニーカー、鞄はリュックだったから大学生らしいと言えばそうなのだが、私にはどちらかというとオフの日の社会人のように見えた。

一人の容姿に10行も使ってしまった。御察しの通り彼の容姿はめちゃくちゃに私好みだ。見ているだけで満足するのでこうしてたまにデートしてもらう。相手が自分のことをどう思っているのか考えなくて済むから気楽なデートだ。そういうものをデートと呼んでいいのかはさておき、美術館に寄贈されてしまうのではないかと少し心配になる友達のフォルムにはセラピー効果があり、私は有難くその効能を享受する。

 

大学のキャンパスが池袋の西側になるので、目的地である東口のジュンク堂に行くためには南か北の地下道を通る必要がある。ホテルメトロポリタンを横目に南側から回り込みながら移動する傍ら、変わっていく池袋の街並みについて話した。なんでも相手は、当大学に入学する一つの理由となった池袋ウエストゲートパークの映画風景に思い入れがあるそうで、開発されつつある西口周辺を歩いているとノスタルジックな気分になるという。不動産開発に携わる企業に就職が決定している身としては耳が痛い。芸術劇場前の噴水も取り壊され、一時はポケモンGOで賑わった広場も今は封鎖されている。以前そばを通った時は喫煙所も閉鎖されていたはずだが、どこからか苦情でも入ったのか、仮設の簡易喫煙場所ができていた。

高架下の駐輪スペース脇の裏道を通る時はいつも思い出してしまうのだが、高校生一年か二年の冬、河合塾主催の模試で今通っている大学(当時は志望校にすら入っていなかった)が会場だった時、私と友達はあまりに方向音痴なので黄色い受験票(案内地図が載っている)を手にした他の高校生に付いていけば目的の場所まで辿り着くのでは と閃いた。楽をした結果、分かったことは池袋会場は少なくとも三つあり、先導者たち(勝手に尾けていたのは私たちだが)の行き先は実は異なっていたという少し考えれば分かりそうな事実。模擬試験を受ける前に想像力を鍛えた方が良い。

結局私たちは一科目の日本史の時間に少し遅刻して入室する羽目となったのだった。覚えているかぎりにおいて、これが最初の池袋の記憶だ。

 

ジュンク堂に着き、まずは一階で目ぼしいものを探した。顔のフロアなだけあって、また残額を気にしなくていいフランクさも背中を押し、あまり悩まずとも欲しいと感じるものを見つけることができた。気前よく1800円のカルチャー雑誌と1700円の社会文芸誌をプラスチックのカゴに入れていく(そういえば本屋でカゴを持つのは初めてだ)私を半ば呆れて見守っていた友達が、芥川賞発表が昨日だったはずだと文芸誌コーナーに移動する。文學界、新潮、すばるなどは図書館の雑誌コーナーで閲覧できるよと伝えたら初耳だったようで驚いている。私もつい最近まで知らなかった。

一階では他に、沢木耕太郎深夜特急を即決してエスカレーターに乗り、二階の実用書 旅行 地図エリアへ。旅行エッセイの棚にアジアのカレーについて書かれた本を見つけたのでポツポツとカレーの話をしながら立ち読みをする。立ち読みでお腹がいっぱいになってしまうと困るので地図を見に行く。昔住んでいた土地の地図を見つけ、表紙がまさに家のあったエリアを示していたので、興奮しながら白抜きにされた一区画を指で教える。月末徳島に行く用事があるので、徳島の地図を探したけど見つからなかった。

昔ってカーナビがなくて親が一生懸命地図を睨んでたよね、そうそう 小学生くらいの時によく自家用車で聴いてたCDって今でも記憶に残ってるよね、と小さめの声で話しながら画用紙整理棚に仕舞われている隠岐の海や兵庫の山を眺めた。(今知ったけど兵庫には山が多いらしく、兵庫100山というページが出てきた)

私たちにはGoogleマップという心強い存在がいるので(信用できない先導者や拡大できない地図とは大違いだ)このフロアには用がない。あ、一冊だけ香港に関する分厚い本をカゴに入れた。

三階は文芸エリアだったけれど、なんとなくここは終着点な気がして先に最上階の芸術 洋書を見ることにした。オオサカナオミが表紙を飾るTIME誌や広告デザインのテキスト、J.K.Rowlingの新作など目新しいものがたくさんあって楽しい。洋書コーナーにも中国語圏の書籍は置いてあった。迷ったものの、残高と相談してこのフロアは目だけで楽しむことにした。音楽コーナーはピアノの楽譜やアーティストの著作物などが置いてあり、楽器のできない者に用はないよと言われているみたいであっさり通り過ぎてしまった。友達は少し興味を引かれたみたいだったが、彼は基本的に何にでも関心を持つきらいがあるので、そんなに辛抱強くは待ってあげなかった。

三階に戻る。村上龍の小説のおすすめを教えてもらおうと思っていたのに作家の名前をど忘れして聞けなかった。代わりに今まで読んだことのない山崎ナオコーラのエッセイを手に取った。

ここで予算が尽きたのでジュンク堂は終了。会計を済ませて重みのある紙袋を下げ、入ってきたのとは反対の自動ドアから出る。

 

 

 

 

 

 

長くなったので続きは明日以降書きます