朝のコインランドリー

洗うものは山ほどあるんだけど

暮らしの匂い

 

 

今、新浦安駅から京葉線に乗り、シリシリと沈みゆく太陽を車窓越しに見つめている。

新浦安は不思議な街だった。新しいものたちで構築されたコンパクトシティ明海大学のキャンパスがあるので学園都市としても機能している。駅のそばに住んでいるのであろう人たちも、若い人が多い気がする。

広く平らに整備された道路にはリゾート風の植物が配置され、駅から少し歩くと住居施設と呼ぶには大層すぎる建物が並ぶ。どのマンションもホテルのように立派だ(その中のいくつかは実際にホテルのようだった)。

 

街には匂いがある。灯りがある。音がある。わたしはどんな街の匂いも、灯りも、音も一様に愛している。愛しいそれらたちは、わたしの知りえない誰かの生活なのだ。

街を歩き、それらを感じ取ることは、とてもわくわくする事だと思う。同時に、掴みようもなくノスタルジックでもある。

誰かの暮らす街。かたやわたしにとっては通り過ぎるだけの街。ほんのいっとき、交わった線。どうしたって一人の手に掬える時間や空間は限られているのだ。

だからわたしは知人の住む街を歩く事が好きだ。彼らの目や耳や懐かしい記憶たちを通して、わたしはその街の心に触れる事ができる。それは、ひとつの身体しか持たないわたしたちが祝福すべき温度なのだ。